やわらかい・飲み込みやすい
誤嚥(ごえん)を防ぎ、誤嚥(ごえん)性肺炎を予防するためには、食べ物が口の中でバラバラにならないように調理に気を付ける以外にも、いくつか方法があります。
介護を受ける方の状態にもよりますが、ここでは一般的な方法と考え方についてお伝えします。
急いで食べる、慌てて食べるのではなく、リラックスできる食事の時間を作ります。食事をする環境を整えて「さあ、ごはんの時間だ、これから食べるぞ」と意識することも準備のひとつ。口の中に入れるひと口の量が多過ぎないように気を付け、よく噛んで味わい、しっかり飲み込んでもらいましょう。やや小さめのスプーンを使う手も。
噛む・飲み込む力の具合によって、献立と食形状を選びます。「誤嚥(ごえん)につながりやすい6つの特徴」を参考に、パサパサやペタペタ食材を含まない献立を心がけます。好きな食材や味付け、香りや見た目で、食事を楽しんでもらえたら作る方もうれしいですし、食べる方も食欲が出て脳が活性化します。
食べる物にとろみをつけたり、ゼリー状にする最大の目的は、飲み込むときの速度をゆるやかに、ゆっくりさせること。咽喉(のど)を通るものが「食べ物か空気か」を見張る番人(喉頭蓋)が、正しく判断できるように助けます。
口の中の細菌が気管に入ることもありますし、食事後、口の中に残った食べ物に気づかずにいると寝ている間にじわじわと気管に入ってしまうことも。食事後は歯磨きや、うがいによって、口の中をきれいに、清潔に保ちましょう。
長時間横になっていると、口の中の細菌や、気付かずに口の中に残っていた食べ物が気管に入りやすくなります。できるだけ上体を起こした姿勢を保つようにします。
ベッドで食事をする場合はしっかり起き上がるか、あるいはリクライニングで上体を30度~60度程度起こし、咽喉(のど)の動きを妨げないように、首の後ろにクッションなどを置いて咽喉(のど)の部分を安定させ、身体に対して首部分が前屈しているとしっかり飲み込みやすくなります。
食後すぐに横になると、口の中に食べ物が残っていた場合に気管に入りやすいため避けましょう。
誤嚥(ごえん)は食べ始めの一口目に起こりやすいとされています。食べる前に、口の周りの筋肉はもちろん、首から肩などの上半身の筋肉を動かす運動をすることで、舌や唇、頬などの飲み込み時に動く筋肉がやわらかく動きやすくなり、噛むことと飲み込むことがスムーズになります。
私の家族は、実際にやってみてその効果を実感していました。ぜひお試しください。
食事中にムセても、慌てません。顔を下に向けて口の中に残った食べ物を吐き出してもらい、手のひらをカップ状にして、首の後ろの付け根辺りを軽くポンポンとたたき、咳を誘発します。咳をすることで異物の排出を促します。上を向いたり、深呼吸をするとかえって異物が気管に入りやすくなるので注意しましょう。
以上、調理以外での対策をご紹介しました。
食事中にムセる、痰が出る、飲み込みに時間がかかる、食後に発熱するなどは、飲み込みが十分でなく誤嚥(ごえん)しやすい状態になっているサインです。
耳鼻咽喉科や歯科では「嚥下(えんげ)機能評価検査」という飲み込む力の検査を受けられます。飲み込む力の加減について知ることができ、誤嚥(ごえん)しやすい食べ物や、誤嚥(ごえん)を避ける食事方法などのアドバイスも受けられます。
気になるようなら、検査を受けてみるのもよいでしょう。
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