やわらかい・飲み込みやすい
「誤嚥(ごえん)を防ぐ」カテゴリーのページでお伝えしたように、誤嚥(ごえん)を防ぐには、口の中に入った食べ物がバラバラにならずに、ゆるく、ひとまとまりの塊り(かたまり)になり、飲み込みやすくなることが大切です。
口の中でバラバラになりやすいもの、パラパラしやすいもの、サラサラと喉(のど)に勢いよく入りやすいものは、誤嚥(ごえん)につながりやすいため、こうした食材は「とろみ」をつけて、まとまりやすくしましょう。
とろみをつけることで、滑らかさも加わり、食感がよくなります。
一般に、「とろみをつける」と言うと片栗粉やくず粉を思い浮かべる方が多いと思いますが、実はこの2つ以外にも、とろみをつけられる食材はたくさんあります。
例えば、ほぐした魚などはパサつきやすいので、バターソースや、マヨネーズ、ホワイトソースなどの油脂を使ったソースをからめると、まとまって滑らかさも加わります。
こうした食材を利用することのほかに、もっと手軽に短時間で「とろみ」を付けたり、まとめたりしたい場合に役に立つのが「増粘安定剤(ぞうねんあんていざい)」です。
文字通り、食品や飲料に粘り気を増やして、その状態を安定させることができ、食品や飲料にとろみをつけたり、ゼリー状に固められる食品添加物です。
安全な天然由来のものがほとんど
食品添加物というと身体に悪いようなイメージがありますが、安全な天然由来のものがほとんどで、食感やのどごしを良くするものとして、ジャムやソース類など、すでに私たちが日ごろ食べているさまざまな食品に使われています。
食品の成分表示ラベルなどにも「増粘剤」「増粘多糖類」といった表記で、広く見かけるものです。
下の写真は私たちがよく手に取る商品のラベルの表示例です。クリックすると拡大写真が別ページで開きます。
増粘安定剤は用途によって次の3つに分類されます。
[1]増粘剤(とろみ剤)
食品にとろみと粘りを加える目的で使う場合、「増粘剤」と表示され、ソースやバター、製菓クリームなどに使われています。「とろみ調整食品」ともいいます。
[2]ゲル化剤
食品をゼリー状に固める目的で使用する場合、「ゲル化剤」と表示され、ジャムや菓子ゼリーなどゼリー状食品の形成に使われています。
名前の「ゲル(gel)」は「gelatine(ゼラチン)」や「gel(ジェル)」などの言葉の由来でもあり、かたまっている凝固状態を表します。
このサイトでは、介護用のゲル化剤のことをわかりやすく「ゼリー化パウダー」と呼んでいます。
[3]安定剤
食品の形を保つ目的で使う場合に、「安定剤」と表示されています。アイスクリームや缶詰などによく使われています。
つまり、とろみをつける「とろみ剤」も、「ゲル化剤」(このサイトではわかりやすくゼリー化パウダーと呼んでいます)も、同じ増粘安定剤の仲間ということになります。
介護ごはん作りでは、ある程度噛むチカラがある場合(「食べやすい食品の形状表」でA・B・Cの3つのグループに当てはまる場合)に、細かく刻んだ食べ物が口の中でバラバラになって誤嚥(ごえん)につながらないように、とろみを付けて食べ物をまとめます。※「食べやすい食品の形状表」ページはこちら(←リンクしています)
また、固形物が噛みにくい、あるいは噛めない場合(上の「食べやすい食品の形状表」でE・Fのグループに当てはまる場合)は、食材の粒が少ないか無い状態でゼリー状にまとめて寄せると食べやすく、誤嚥(ごえん)を防ぐことができます。
とろみ剤も、ゼリー化パウダーも介護ごはん作りで大活躍
噛むチカラ、飲み込むチカラの具合によって、とろみをつける場合には「増粘剤(とろみ剤)」を、ゼリー状にしたい場合は「ゼリー化パウダー」を使用すると良いでしょう。
とろみ剤、ゼリー化パウダーのいずれも、複数のメーカーから市販されています。
そして、「とろみ剤」も「ゼリー化パウダー」も誤嚥(ごえん)を防ぐ目的だけでなく、実は食事のメニューの幅を広げるのにもとても役立ちます。醤油などにとろみをつけた「ジュレ」も、これらを使用できます。食感が変わり、「美味しい」のバリエーションを豊かにしてくれる頼もしい助っ人でもあるのです。
とろみ剤とゼリー化パウダーの違いについては「ゼリー化パウダーについて」(下記リンク)をご覧ください。
◆とろみ剤・ゲル化剤について、もっと知りたい◆